「また、あれかよ?」とお嘆きのベテラン読者の方々には大変申し訳ないのですが、今回はちょっぴり追加情報もあったりしますので、どうか最後までお付き合い下さい。
わたくしが通っていた小学校の裏手には、木造平屋建て、ガラスの引き戸で店内は丸見えの「駄菓子屋」がありました。
かれこれ40年近く前には、毎日毎日放課後ともなりますと、小学生の集団でお店は大繁盛。
押すな押すなの大混雑ぶりでございましたが、スーパーマーケット、コンビニエンスストアの台頭などもございまして、数年前には、惜しまれつつも閉店してしまいました。
たまたまその路地を先日通り掛かったのですが、何ということはない2階建ての住宅に立て直された佇まいを見るにつけ、当時が妙に懐かしく、また店主は未だ健在なのか?
そこんところが気になって仕方がないこともあり、その場所に「伝説の駄菓子屋」が存在したことなど、もう誰も語らないであろうと思えば、幾ばくかの寂寥感(せきりょうかん)を覚えるのでありました。
おそらく当時30代であったと思われる店主は、有名人に例えて言えば、あき竹城(たけじょう)さん、落合博満(おちあいひろみつ)さんの奥様にそっくりなルックス。
声は大きく、がらっぱちな性格で、いつも子供たちを怒鳴りつける豪快なキャラクターでした。
屋号からもお解りのように、おそらく苗字は「ヤマダ」だとは思われますが、その真偽については定かではありません。
「ヤマダ」という苗字で30代、なのに、付いたあだ名は「ヤマダのババア」。
小学生たちから、ありったけの愛情を込め、学校と言わず、家庭と言わず、「今日さぁ、ヤマダのババアがさぁ」と日常会話という会話に登場するババア。
以前にも、一度取り上げたことがございましたが、定期的にお話ししておかないと、あっけなく風化してしまうであろう「ヤマダ襲撃事件」につきまして、今週はひとつ語らせて頂きます。
文中、「ババア」という単語が、これでもかと登場致しますが、別に悪気がある訳ではございませんので、どうかご容赦下さいませ。
お客である小学生に対して、時には無礼な態度に出るババア。
「あんた、駄菓子ばっかり食べてるから、そんなにお腹が出てんじゃないのぉ?」
「あんたはさぁ、ちょっと歌手の橋 幸夫(はし ゆきお)に顔が似てんねぇ、でも、そうでもないか、おばさん、目があんまり良くないんでねぇ」
その度に、小学生たちはいちいちカチンときておりました。
騒動の発端を知る者は1人とていないと思われますが、ただ何となく、別に熱心な指導者もいなかったのにもかかわらず、カミュの「異邦人」のように、本当に動機は曖昧なまま事件は起こったのでございます。
ヤマダでは、「花火」が1年中売られておりました。
フツーは夏だけだと思われるのですが、なぜか年がら年中置かれている。
ヤマダのババアに、一泡吹かしてやろうぜ。
小学生が考えることは単純かつ、ストレートでございます。
値段がそれほどでもない「爆竹(ばくちく)」を大量に購入し、ヤマダのババアが席を外したスキを見計らって、火のついた爆竹を店内に投げ込むのです。
パン、パン、パン、パーン!
煙とともに盛大なパーティーでも始まったかのようでした。
走り去る小学生たち。
背後からは、「こぉ〜らぁ〜、なぁ〜にしてんだぁ〜!」とババアの叫び声が聞こえて参ります。
振り返れば、愛用している「ゲタ」を右手で振り上げ、裸足で追って来るではありませんか!
全力疾走する子供たち。
毎度毎度、ババアから逃れるスリルが堪らないのでしょうか、日に日に襲撃犯(?)たちの人数は増え、気がつけば100人を裕に超えようとしていました。
毎日、投げ込まれる爆竹。
売れば、投げ込まれるのですから、売らなきゃいいのに、そこはほれ、ヤマダも立派な「企業」ですから。
爆竹は、おそらく当時のヤマダの経営を支える大ヒットアイテムだったと思われ、どんなに投げ込まれても、売れるものは仕方がない。
「マッチポンプ」とはこのことなのでしょうか?
「襲撃」という被害を受けても、「売り上げ」には敵わなかったのでしょう。
小学生と言えども、毎回おんなじような襲撃を繰り返しておりますと、さすがに飽きて参ります。
ある日などは、ヤマダの裏手にございました木造2階建てのアパートに忍び込む。
ポケットというポケットには拾った「小石」を詰め、2階にございます共同トイレに侵入し、仲間の合図を待ちます。
両手に小石を握り締め、トイレの窓から、いっせいにヤマダのかわら屋根目掛けて「爆撃」を開始するのですが、かわら屋根に小石がぶつかる音は、妙にリズミカルで、まるでヒョウでも降ってきたかのようでした。
すると、裏木戸を開け、頭上を見上げながら、「こぉ〜らぁ〜、おまえらぁ〜、なぁ〜にをしとるかぁ〜!」というババアの叫び声。
こんなトリッキーな日々にも、突然終わりが訪れました。
数ヶ月か、いや半年、1年くらいは続いたのでしょうか、ある日、ヤマダがボヤ騒ぎになってしまったのです。
誰かが投げ込んだ爆竹によって、店内に火が点いてしまった。
大事には至らなかったものの、ここまで来てしまえば、ババアとしても黙ってはいられなかったのでしょう。
小学校にクレームが寄せられまして、生涯忘れらないこれまた「伝説の朝礼」へとなだれ込むのでありました。
その日は、風が強い冬の朝だったと思います。
何となくいつもとは違う雰囲気の校長先生が壇上に上がり、マイクを通して我々に向かってこう言い放ちました。
「先日、駄菓子屋のヤマダさんで、危うく火事になりそうな事件がありました」
「お店の中に、花火が投げ込まれたのが原因だったようです」
「お店の方から、注意してほしいとのお願いがありましたので、今日、こうして皆さんにお話ししています」
「皆さん、正直に答えて下さい、この中で、ヤマダさんにご迷惑をお掛けしたことがある人、手を挙げて下さい」
水を打ったように静まり返る校庭。
おずおずと手が挙がり始めたのですが、最終的には、全校生徒のほぼ90%くらいの手が挙がりました。
もはや個人的に呼び出し注意をするレベルではないことに、心底あきれてしまったのでしょうか、マイクを通して、一瞬風が吹きすさぶ音が聞こえたあとに発せられたのは、ため息交じりの校長のひと言。
「もう、いいです」
今、思い返しても、校庭中の生徒たちの手が挙がる様は、壮観と申しましょうか、「マスゲーム」のようでもあり、何だか勇ましく(?)も感じられたのでありました。
ヤマダのババアの名誉のために付け加えさせて頂きますが、本人はさして嫌味な性格でもなかったのですよ。
憎まれて襲撃されていたというよりも、リアクションが面白過ぎるから、爆竹を投げ込まれていたというのが正解だと思います。
愛情の裏返しとか、そんなヤツです。
いや、他人の家に爆竹を投げ込むなんて行為は絶対に許されないのですが、時代と申しましょうか、高度成長期の勢い(?)みたいなものは何となく感じますよね。
で、ババアとの個人的な思い出なんですけど、おそらく日曜日だったと思われますが、駄菓子を仕入れにいった帰りのババア。
自転車の荷台に大量の駄菓子を積んだババアと偶然出くわしたことがあるんですよ。
いきなり逃げるのも不自然なので、一応挨拶してみると、「アンタはウチの店に来ても、万引きをしたことはないねぇ」。
「おばさんはさぁ、お店の切り盛りをぜ〜んぶ1人やってんのよ、ホントに大変なのよねぇ」
何となくババアの愚痴を聞かされつつ、自転車を引くババアと並んで歩くわたくし。
以来、店に駄菓子を買いに行った際の態度があからさまに軟化したババア。
以前は絶対にしてくれなかった、オマケまでしてくれるようになっちゃって。
1人住まいだったと思うんですけど、駄菓子屋経営の苦労話なんかを誰かに聞いてほしかったのかもしれませんね。
こんな心温まるエピソードで終わった、ヤマダ襲撃事件なのでありますが、このままではトロント・ブログとは到底呼べないシロモノになってしまいます。
無理やりにでも、トロントに結び付けないとどうにもこうにも今週のブログを終われません。
昨今の東京、いや日本中かもしれませんが、駄菓子屋さんの数は激減と申しましょうか、もうほとんどトキみたいに「レッド・データ・アニマル」化していると思うのですよ。
昔の駄菓子屋さんの代わりになっているのは、コンビニだったりすると思うのですが、わたくしめがしばしば通う、ドン.キホーテ様。
このドン.キホーテ様には、結構広いスペースの駄菓子コーナーがございます。
ある時、見つけたのは「カレーせん」というカレー味のおせんべいなのですが、お値段の割りには美味しいのなんのって。
帰国した際、たまたま食した妻と娘も大ハマリで、トロントにお土産として大量に買い込んで帰ったのが、この「カレーせん」。
これがあーた、娘の友だちたちからも絶賛されたのでございます。
中国、韓国、インド、フィリピンからの移住者たちなのですが、こんなに美味しいおせんべいを食べたことはないとおっしゃる。
まあまあスパイシーな味が大好きな方々なので、この「カレー味」がハマったんだと思うのですが、我が家が東京から買って帰る(ガイジン勢に差し上げるための)お菓子をざっと列挙してみましょうね。
ドン.キホーテ様で購入する「亀田のカレーせん」税抜180円(亀田製菓)
同じく、ドン.キホーテ様で調達する「やさしい口どけ 5つのフルーツ フルーツ ラムネ」税抜570円(春日井製菓)
ウチの近所だと、どらっぐぱぱす様が一番安いと思うんですけど、「ばかうけ アソート 40枚入り」税抜258円(栗山米菓)
これらの3アイテムは、周囲のガイジン勢から絶賛されているのであります。
大袋に大量に入っていて、多種類の味が一度に楽しめて、なおかつひとつひとつがきちんと包まれている。
トロントでは、こんな品質の高いお菓子を、これほど安いお値段で購入することは絶対に不可能です。
「カレーせん」こそ違いますが、「フルーツ ラムネ」、「ばかうけ アソート 40枚入り」はまさに大袋の魅力。
「こんなにおいしいスナック菓子はトロントにはない」
娘の友人たちが感激するのも、無理はありません。
わたくしもそう思います。
トロントのスーパーなんかでも、あられの類いは売られていますが、どうにも味が今イチなんですよ。
味に深みがないと申しましょうか、変にスパイシー過ぎたり、妙に味が濃かったり薄かったりね。
韓国系のスーパーなんかでは、輸入された日本製のお菓子が売られておりますが、日本での値段の2倍から3倍となっております。
それでも、カレー味のおせんべいなどは見掛けませんし、ラムネもほとんど見ないですよねぇ。
ガイジン勢に言わせますと、ラムネのあの口どけは堪らないようです。
何となく、ヤマダ襲撃事件とお土産のお菓子をつなげてみたんですけど、どうでしたかね?
日本のラムネ如きで大喜びしてくれるとは。
おせんべいがそれぞれの味ごとに袋詰めされていて、大袋に入って売られているのは、何とも「クール」なのだそうです。
トロント(北米と言っても好いかもしれませんね)のお菓子はレベルが低いですからねぇ。
今どき、こんなに着色料使ってんのかよ?、というような下品な色合いのお菓子も多いですし。
「ばかうけ アソート 40枚入り」の大袋をホントにうれしそうに抱きしめて持って帰る、娘の友人たち。
今年で13歳の女の子なのに、こんなリアクションです。
おせんべいからも、ニッポンの底力、「クール・ジャパン」を見て取れるのでありますね。
先日、ヤフーのトップニュースになっておりましたのは、アメリカで爆発的に「柿の種(商品名は「カメダ・クリスプ)」が売れている。
辛さは日本の製品の3倍だそうですが、今年は売り上げが前年比5割増しだというのがありました。
おせんべいの類いでも、日本は海外を席巻しているのでしょうか。
田中家では、ディナーのあとで、おせんべいなどをつまむのですが、ポテトチップスなどではどーにも違うんですよ、こんなところはモロ日本人なのかしら、「ヤマダ襲撃事件」は生涯忘れません、だってお店に「爆竹」を投げ込むことなど、もう一生ないでしょうからね、今週は大人しく「通常営業(?)」でお届け致しました、好きですトロント!


