わたくしも、たまたま近所のスーパーに買い物に出掛けた際、ちょうど通勤してくる方に出くわしたので、ここはひとつ勇気を持ってサポートしてみようと送らせて頂いたことがございます。
以前は恥ずかしながら、ハンディキャップを抱えてらっしゃる方々に積極的に近づくことは出来なかったのです。
そんなわたくしが変わったキッカケ。
それは、何とトロントに移住したことだったのでございます。
電車やバスに乗る時に、赤ちゃんをベビーカーに乗せたお母さんが、ベビーカーを折り畳むべきか否か?
この問題は、日本でもしばしばニュースで取り上げられ、ネット上でも度々議論されて参りました。
混んでいる電車内では、赤ちゃんを抱っこしてベビーカーを畳むべきだ、とかね。
小さなお子さんをお持ちのお母さんたちが肩身の狭い思いをしているのは、圧倒的に日本だと思います。
こと東京で見る限りですと、周囲の目を気にして、赤ちゃんを抱っこしているお母さんも多いですしね。
転じて、トロントなんですど、ベビーカーを折り畳むお母さんはほとんどゼロ。
日本よりも数段大きなベビーカーを周囲のことなどほとんど気にすることなく、堂々と車内に持ち込んでおります。
折り畳めないベビーカーも多いし、電車にしても日本ほどは混雑しないという理由もあるみたいですけどね。
地下鉄なんかですと、ホームとの段差がないので問題ないのですが、バスやストリートカー(路面電車)などですと、東京のそれなんかよりも急なステップを上がれなければなりません。
当然、お母さん1人で車内に入れることは出来ない。
すると、さも当たり前のように前後のお客さんが持ち上げ、ベビーカーを車内に運んでくれます。
で、狭い車内でもベビーカーは畳まずそのまま。
次々に乗り込んでくる乗客の皆さんにとっては、そのベビーカーは明らかにジャマだと思うのです。
通路のど真ん中を占拠しているんですからね。
でも、誰一人として嫌な顔をする人がいないんですよ。
これは、トロントに移住してみて驚いたことの1つですね。
車椅子の方に対しても同様です。
日常生活に「ボランティア精神」が組み込まれていると申しましょうか、困っている人を見掛けるとみんなでフォローしてあげている。
こんな光景を目(ま)の当たりにするにつれ、わたくしの心の中でも何か変化が起こったのでしょう。
ストリートカーに乗り込む際なんかに、ベビーカーのお母さんがいらっしゃれば率先して持ち上げてあげるようになったのです。
以前、サラリーマンをしている時の話ですが、東池袋の駅のホームで、ほぼ毎朝一緒になるお父さんと小学生くらいの娘さんがいました。
初めて見掛けた朝は、娘さんがお父さんにしきりに今日のファッションについての質問をしていました。
「お父さん、ピンク色の服、私に似合ってる?、ねぇ、似合ってる?」
「あぁ凄く似合ってるよ」
「私、ピンク色が大好きなんだぁ」
とてもうれしそうな娘さん。
ピンク色のTシャツを着た娘さんの手を左手で握るお父さん。
2人の後ろ姿を見ていたのですが、お父さんの右手には、白い杖が握られています。
振り返った女の子は目を閉じていました。
小学生くらいの娘さんは、視覚障碍者なのです。
両目を閉じたまま、ピンク色が似合っているのか、お父さんに聞いていたのです。
その時、なぜだか急に涙が溢れてきて、ハンカチで目頭を押さえていました。
同情したのではありません。
安っぽい同情など、その親子に対して失礼に当たると思うのです。
強いて言えば、神様への抗議といった感じでしょうか。
どうしてこんな目に遭わすのか?
とてもとても切なくなってしまったのです。
彼女は、「ピンク色」という色を見たことはないと思います。
お父さんやお母さんから、どのような色かということを言葉で説明を受けていたとしても。
でも、ピンク色が大好きなのだそうです。
もしかすると、その女の子の頭の中にあるピンク色は、我々が見ているその色よりも、遥かに美しい色なのかもしれません。
今は、もう高校生くらいにはなっているかとは思われますが、幸多かれと祈るばかりです。
白い杖をついて歩いている方を見掛ける度に、今でもこの娘さんのことを思い出します。
おそらく一生忘れられないシーンだと思うのです。
視覚障碍者の方々が働く会社まで、そばに寄り添い送り届けている際、どうにも気になりますのは、「点字ブロック」をまたいで駐車されたクルマが大変多いということです。
白い杖をつきながら、トラックの荷台にぶつかりそうになっている姿なんかを見掛けますと、まったくどうにかならないものだろうかと思ってしまいます。
「点字ブロック」の発明は、昭和40年の岡山県だったのだそうです。
で、実用化されたのが昭和42年から。
県立岡山盲学校近くの国道にある交差点が、最初の設置場所とのこと。
驚くなかれ、日本が点字ブロック発祥の地だったのですね。
ブロックには主に「警告ブロック(点状ブロック)」と「誘導ブロック(線状ブロック)」があり、ドットの形が「点状ブロック」。
真っ直ぐの棒が平行に並んでいるのが「線状ブロック」と呼ばれています。
「点状ブロック」は危険を知らせる、「線状ブロック」は、この線に沿って進んで下さいねという合図なのだそうです。
JIS規格では、ブロックの一辺は30cm以上、線状ブロックの線は4本以上、点状ブロクの点は5×5=25個以上などがあるとのこと。
トロントで見掛けるのは、圧倒的に「点状ブロック」ですね。
地下鉄のホームが最も目に付くと思われますが、その大きさは日本のものの1.5倍くらいでしょうか。
明らかに日本で設置されているブロックよりも大きいですね。
日本のホームですと、白線がペイントされたタイルが一番線路に近い部分にあって、その次に黄色い「点状ブロック」が敷き詰められております。
トロントの場合はビックリなんですけど、線路に一番近い部分。
電車にスレスレの部分が「点状ブロック」になっているのです。
明らかに危ないと思うんですけどねぇ。
だって、視覚障碍者の方々は線路に落ちるギリギリになるまで危険を察知出来ない訳でしょう?
日本の場合は、「点状ブロック」がタイル一枚分内側ですから、どう見ても安全性は増すはず。
これなんかも、日本と海外の「価値観」の違いなんでしょうねぇ。
「危険はより早く察知させるべき」と「本当に危なくなってからで十分」。
トロントにて、頻繁に利用する地下鉄なんですけど、ホームに立つ度に、妙な「違和感」を覚えます。
やや大きめの「点状ブロック」が電車とスレスレの位置に並べられている。
これは直した方が好いと思うんですけど。
もしや、何か別の意図でもあるんですかねぇ?
普段は、ほとんど意識することなく通り過ぎてしまう「点字ブロック」。
トロントに移住以来、長らく疑問に思っていることの1つだった「点字ブロックの位置」につきまして、今週はご紹介させて頂きました。
トロントの地下鉄の車内よりも、東京の車内の方が、乗客の皆さまは明らかにイライラしていらっしゃるような気が致します。
通勤ラッシュの過酷さは、わたくしも20年間味わっておりましたので、重々心中ご察し申し上げます。
とはいえ、何らかのハンディキャップを抱えている方々や赤ちゃんを連れたお母さんなどを車内で見掛けたら、積極的にフォローしたいものですね。
そんなのキレイ事だ、とか言われちゃうと困るんですけど。
キレイ事を実践している方々が、トロントには沢山いらっしゃいますのでね。
見ず知らずの乗客の皆さんが、ベビーカーをさも当然の如く持ち上げてあげている街、この点は本当に素晴らしいと思います、好きですトロント!
*掲載写真は、トロントの地下鉄ホームの点字ブロックでございます。電車とスレスレ。これもまた「価値観」の違いなのでしょうか?



いつも大変お世話になっております。
さて、この度はコメントを頂戴しまして、誠に有難うございました。
トロントの方が正しいのですね。
ホームの一番近くに「点字ブロック」があったら危ないんじゃないの?、と思うのは我々の勘違いとは。
よりホームに入って来る電車に近づいてしまうと思うんですけど、なかなか素人目には判らないものですねぇ。
貴重なご意見を頂戴しまして有難うございました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
田中フラッフィー